ここで有名なのは、巨大な寝ている仏像である。またしてもキンキラキンだ。ガイドブックにもよく登場する。奈良の大仏が横になったようなもんだが、心なしか顔つきが柔らかい。しかし寝ている意味はさっぱり分からないし、分かろうとする努力もあまりする気がない。
足の裏の模様なんぞを詳細に眺め、意味も無くフンフンとうなづく。記念写真を撮り、「でかいなあ。きらびやかだなあ。何でこんなの作ったのかなあ」と思いつつ、周辺を一回りして観光終了。
再び出口を出て、市街に戻る方向に歩みを進め、あまり目立たない日の当たらないちょっとした物陰でガイドブックを広げる。先ほどの件があるので、人の少ない所を選んだつもりだ。
しかし広げて数分、やはり声がかかった。先ほどと同じである。「What are you looking for?」今度は親切そうなおじさんである。発音も分かりやすい。
思わずフアランポーン駅に戻るんだ、と答えてしまった。駅周辺ならレストランがあるかなと思っていたからである。
するとおじさん、ますますにこやかな顔になり、それは良い考えだと褒めてくれる。(どこが良い考えなのか、さっぱり分からない)さらに親切に、駅に行くためにはこのルートを行けばよい、と地図上で教えてくれる。
「なるほど」と頷いていると、おじさん、ますます調子に乗ってきた。このルートの途中にはこことここに見所がある、と言う。親切この上ない。
さらに相づちを打っていると、ついに本領発揮。じゃあそこまで案内してあげるから、これに乗りなさい。といつの間にかトゥクトゥクが近づいてきている。
前回のおばさんより、親切丁寧で手が込んでいる。しかしトゥクトゥクを見た瞬間、頭の中に警報が鳴り、またもや毅然として「No thank you」しかしおじさん、すぐには諦めなかった。
絶対得だし、見るべきだと主張を続ける。私の方はすでに気持ちが固まっていたので「No thank you」を連発。ついにおじさん諦めた。引き際は実にあっさりしたものだった。
再び一人になり、あまりこんなところをうろうろしていると、またろくでもない声がかかるだろうと判断し、面倒だったがタクシーをつかまえることにした。
今度はすぐに空車が来た。中年の運転手である。手を斜め下に挙げるとすぐに寄ってきたので、「フアランポーン ステーション」と告げるとすぐに分かってくれた。手順通りだ。
そこでさらに「メーター OK?」と畳みかけると、一瞬躊躇したがすぐに「OK」の返事。安心して乗り込んだ。
駅まではなんと60B(日本円で160円ぐらい)であった。最初のタクシーの法外な料金を納得した一幕ではあったが、同時にタクシー稼業もなかなか儲からない商売だな、と実感した。