日本と変わらぬ居酒屋「花子」で楽しいひとときを過ごす
スクンビット駅に着き、どこに向かったかというと居酒屋「花子」である。ここはインターネットの事前情報で調べてあった。紹介された文章から、日本語が通じると判断していた。
駅を出てウエスティングランドホテルに向かう。目指す「花子」は地図上ではこの裏手に位置している。ホテル手前のソイを右折し、ホテルの壁に沿って回り込んでいく。裏手には数軒似たような居酒屋さんが見受けられた。
花子の前には呼び込みのお兄ちゃんが数人いた。個人的には呼び込みのある店はあまり好きではない。一般的にぼられる店が多いからだ。
しかし今日はその他に候補は考えていなかったので、呼び込まれるままに入り口に近づく。時刻は午後6時。居酒屋に入る時間としては、まだ早いかもしれない。
入り口を入った瞬間、入り口左側の椅子に座った若い女性たちが一斉に立ち上がり、全員がお辞儀をしながら「いらっしゃいませ〜!」と迎えてくれた。これにはびっくり。
う〜む、しょっぱなからなかなかやるな、というイメージだ。一人旅行や単身赴任の中年おじさんの気持ちを舞い上がらせる抜群の効果だ。
ただしこの挨拶、客が増えてくると忙しくなるせいか、段々と女の子たちが散らばり行われなくなるようだ。
店内は右側がカウンター席。左奥にいくつかのテーブル席。さらに奥があるようだが、よくわからない。右奥には厨房らしきところがあって、日本人と思われる板前さんが忙しそうに働いている。
入り口で迎えてくれた女の子たちに指し示されたカウンター席に座った。カウンター席には、右奥で初老のおじさんが定食のようなものを食べていた。
なるほど定食も食べられるのかと、これもうれしい。居酒屋のメニューはだいたい酒のツマミのみのことが多いので、これも客の立場にたって考えているなと思う。
左隣の客は、いわゆる居酒屋さんのお客で、黙々とツマミを食べ、酒を飲んでいる。客が少ないので居酒屋特有の喧騒はない。
先ほどの女の子たちは、しばらく入り口で他の客を待っていたが、その内カウンターの中に入ってきた。皆若い。20歳前後かそれ以下だと思う。
注文を聞かれたので、先ずはクロスタービールだ。ビールばかり飲んでいる。ここのビールは大瓶だった。かなり量がある。女の子がビールを持ってきて、きちんと注いでくれる。
飲むうちに段々と分かってきたことだが、ここの女の子たちはみんな明るく、ひじょうに親切だ。
言葉こそ日本語も英語も片言しか通じないが、態度や物腰がひじょうに素朴で可愛らしい。結婚していない若者だったら、こんな子達と付き合えたらさぞかしうれしいだろうなあと思う。もっとも店の方針としてきちんと教育されているのかもしれない。
さてビールを飲みながらツマミを考えた。旅行前に調べた情報では、一般的に日本食の店はあまり評判が良くなかった。曰く、刺身がパサパサ。天ぷらがベチャベチャ。味が甘すぎる等いろいろ書かれていた。
従って注文には細心の注意が必要だと感じていたが、店の活気と日本人らしい人が多いという現実を見て、この店なら大丈夫だろうという確信を持った。
そんなわけで注文したのは「刺身盛合せ」「カレイ煮付け」という豪勢なものである。
刺身盛合せは予想通りひじょうに新鮮でうまかった。日本で食べるものとなんら変わらない。いわゆる和食のチェーンレストランで食べる刺身よりはよほどうまい。すし屋さんで出されるものに匹敵すると思われた。
カレイは大きなものが1匹、どーんと出てきた。普通はこの大きさなら半身だろう。味もきちんとした日本風の煮付けになっている。予想を大きく上回って大満足である。