バンコクに居場所があるという感覚

 人には相性というものがあるようで、ある人にとっては天国にも思えるような場所でも、ある人にとっては不愉快極まりないと感じることもあるようです。

 旅行好きの私は、日本国内はあちこち行っていますが、やはり旅行先を選ぶときは、さりげなく自分の好みの場所を選んでいるような気がします。そして気に入ると通い詰めることになります。

 私が海外で訪れたことがあるのは、ハワイとバンコクだけですが(その後オーストラリアのケアンズにも行きました)、都市の性格はまったく異なるのに、何故か両者とも相性が良いなと感じています。

 もしかするとヨーロッパやアメリカ本土、オセアニアに行っても同様のことを感じるのかもしれませんが、だとすると許容範囲が広いと言うことなのかもしれません。

 そんな中でバンコクですが、訪れる前は前ページにも書いたように「航空料金が安い」「現地の物価も安い」「人が優しい」「治安が落ち着いている」「大人の遊び場」がいっぱいあるというイメージを持っていました。

 実際これらのキーワードを元に行ってみると、「なるほどその通りだ」と納得した部分もありましたが、「ゴミゴミしている」「人が多い」「臭い(香辛料の匂い?」「交通事情が悪い」「観光客と見ると悪巧みをする輩がいる」と言うことも分かりました。

 それでもトータルでは「面白い」という評価になり通い詰めているわけですが、こういった負の部分に嫌気がさして、「バンコクは嫌いだ」と感じる人もいると思います。具体的にちょっとネットで調べてみると

・ 蒸し暑い

・ 空気が汚れている

・ 交通事情

・ 食事等への衛生観念

・ 何かと疲れる

・ 日本食がまずい

・ タクシーが不愉快

・ 都会過ぎる

なんかをあげている人が多いですね。日本食がまずい、というのは若干誇張があると思いますが、それ以外の点についてはもっともだなと思えます。

 ところが「あばたもえくぼ」ではないですが、人間一度気に入ってしまうと、徐々に欠点が欠点に見えず(さすがに美点にはならないと思いますが)、それを楽しむ気持ちになってきます。

 最初は食べ物でしょうか。初めて空港に降り立ったとき感じた独特の変な匂いは、いつの間にか「うわ〜またバンコクに来ちゃったよ」という歓迎の匂いに変わりました。

 辛いのは苦手なので、相変わらずタイ料理にはなじめないところもあるのですが、タイ式炒飯の類を食べるようになり、「こりゃ結構美味しいぞ」と思ったり、最初は「あんな衛生観念ゼロのような屋台のものなんて、見るのも嫌だ」と思っていたのが、「たまには買ってみるか」という気になったりもします。(実は買っていません)

 慣れともいえるのかもしれませんが、そう言った匂いや料理の特性、屋台の雰囲気を当たり前のように感じることが出来るようになっています。

 そうなった頃から、不思議と観光客に対して悪巧みをしようとする輩からの声がけが消えました。バンコクという都市に体が溶け込みつつあるのかなと思っています。

 中にはそのままグズグズと煮込んだスープのように都会の中に沈み込んでしまう人もいるようですが、幸いにもそこまでは溶け込んでいないようです。

 食べ物に嫌悪感がなくなると、次はやはり言葉ででしょうか。いまだに私はバンコクでは日本語と英語しか使わず、「サワディーカー」と挨拶されても「サワディカップ」という返事が口から出てきません。

 どうしても「グッドモーニング」や「グッドイブニング」になってしまいます。ただ最初はアヒルの鳴き声にしか聞こえなかった女性達の話し声が、何故か爽やかな雑音に聞こえるようになりました。これも不思議な感覚です。

 食べて、話して、徐々にその社会に溶け込んでいくと、やがて考え方や物の見方も現地の人に近づいていくのかなとは感じます。

 ハワイにはすでに20回ぐらい行っていますので、ホノルル空港に降り立った瞬間、自分がハワイの中に溶け込んだという意識をすぐに持つことが出来ます。

 バンコクはまだそう言った心境には遠いのですが、徐々に「何となく居場所がある」という雰囲気を感じ始めています。ここのところ足繁く通うようになったのは、そう言った感覚が芽生え始めたからかなと思っています。



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