化石の店に向かう

バンコクの生徒は逞しかった

 さて、今回の旅行で行ってみたいと思っていたところはこれですべて終了。後はまさに思いつきで行動するしかない。あえて言えばおみやげを少し買うことぐらいか。

 そこでとりあえず息子からお土産としてリクエストのあった石を考えることにしたが、どうも日本でいうところのヒーリング系の磨き上げた石を売っている場所が見つからない。

 あえていうとアクセサリーの店には、その手の石がごろごろ売られているのだが、すでに穴が開けてあったりして、見て楽しむようなものではない。

 宝石店に行っても緊張するだけで、宝石に関する知識はゼロに等しいので変なものを買ってしまう恐怖感から逃れられないし、だいいちそんな高い土産を買う金銭的余裕も無い。そこでガイドブックをパラパラめくっていると、なんと恐竜のフンの化石を売っているというお店を発見。これなら安いこと間違い無しだ。

 店の名前は「ハウス・オブ・ジェムス」。地図を開いて調べてみるとBTSのサバーン・タークシン駅から700mぐらいで、ちょっと遠いが歩いて行けない距離ではない。

 日はまだ高い。夜までには時間がある。「よし、行くぞ!」てな感じでBTSに乗り込んだ。15分で到着。時刻はちょうど4時。駅前からジャルンクルン通りを北上する。

 道は歩道のついた2車線の道路であるが、相変わらずの混雑で、バス、タクシー、乗用車、トゥクトゥク、バイク、自転車が入り乱れて走っている。歩道の方は幅が2mぐらいあって、本来なら余裕があるはずなのだが、あちこちに屋台があるので歩きにくいこと夥しい。

 今回は特にたまたまだろうが、学校の下校時刻と重なってしまったようで、前方から中学生ぐらいの子供たちが次から次へと湧き出るように歩いてくる。皆なかなか真面目で賢そうな顔をしている。服装も日本の高校生のようなだらしない着こなしはしていない。この子達を相手に先生方はどんな授業をやっているのだろうか。

 しかし真面目そうではあるが、歩くのは嫌いなようで、バイクタクシーやトゥクトゥクを呼び止めたり、タクシーに相乗り(これは凄かった。1台に6人ぐらい乗っているように見えた)したりしている。中には自家用車でお迎えがある子もいるようで、渋滞に拍車をかけている。

 後で気がついたのだが、この辺にはどうやら学校がいくつか固まっているらしい。途中のファーストフード店で飲食している様子は日本と同じである。

 さてこの人ごみを掻き分け掻き分け進んでいくと左手に学校があり、ここを過ぎようやく人ごみが少し落ち着いてきた。地図上ではオリエンタルホテルの近くだ。

 超高級ホテルということなので、ホテルのすぐ近くは瀟洒な雰囲気が漂っているのかもしれないが、ちょっと通りに出るとそんな高級感は吹き飛んでしまうようだ。ただ道沿いにはやけに宝石店が目立った。


ハウス・オブ・ジェムスは店そのものが化石状態だった

 さてようやく到着した「ハウス・オブ・ジェムス」だが、みかけは入るのを躊躇う店だった。昭和時代の駄菓子やさんの店先を思わせる。それでもとにかくたどり着いたのであるから、中を見ない訳には行かない。

 強く押すと壊れそうなドアを開けると、中は6畳一間ぐらいの広さで、さらにその半分は店員さんの事務所というか休憩所というか、まあそんな感じの空間である。従って客が商品を見るスペースは1坪ぐらいの広さぐらいしかない。

 私が入っていくとすぐににこやかな顔をした小太りのおばさんが現われた。こちらとしては店の入り口で30%、店に入った瞬間に30%、陳列された商品を見た瞬間に40%購入意欲が失せてしまった。

 別に高級宝石店ではないのだから、キンキラキンに飾り立てる必要は無いと思うのだが、いくらなんでも商品が埃をかぶっていては買う気が失せる。薄暗い店内で、くすんだ宝石の原石と適当に放り込まれたとしか思えない箱の中の化石たちを見て、ある意味悲しくなってしまった。

 この店に来る動機となった恐竜の糞の化石もたしかにたくさんあったが、埃まみれの糞の化石は、まったく何の価値もないように見え、とてもお土産として持って帰る気にはなれなかった。

 宝石の原石が岩の中に存在している様子は地学的な興味を感じたが、産地がアジアではなく南米やアフリカだったので、バンコクの土産としては不適当に感じた。狭い空間の中で、ほぼ360度見て回ったが欲しいと思うものは無く、明るく接してくれるおばさんには申し訳なかったが、勇気を出して店を出た。

 帰りは下校時刻が過ぎたせいで、歩道もずいぶん歩きやすくなっていた。10分で駅に帰り着いた。今考えれば、オリエンタルホテルでちょっと飲み物でも飲んでくればよかったと、ちょっと悔やまれる。5時にホテルに戻り、忙しかった1日を振り返りながらシャワーを浴び、夜の予定を考える。


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