シャークにて

 そばに寄ってきたのは丸顔で目がパッチリした子です。(実は近くで見ると、化粧によって目を大きく見せていることがよく分かります。このあたり照明とメークのテクニックでずいぶん印象は変わりますのでご注意)

 例によって「座ってイイデスカ?」「良いですよ」の問答が繰り返されると、すぐに横に座り込み自己紹介が始まりますが、ここでは名前を伏せます。

 続いて「どこから来たか?」という問ですが、どうも私の顔は日本人にはみえないのかもしれませんね。

 「日本人ですよ」と答えると、「日本人ヤサシイ」とか言いながらますます体を接近させ、「ノミモノイイデスカ?」と迫ってきます。その仕草を、最初に私を席に案内してくれたウエイトレスさんが目ざとく見つけ、「注文するなら私に」と言ってきます。

 どうもこのあたりから、「この客からは、奢ってもらえる」というカンが働いていたようです。もしかしたら鼻の下を長くしたおじさんの顔になっていたのかもしれません。こうなるとチョイ悪おじさんではなく、ただのエッチなおじさんになってしまいます。

 「飲んで良いよ」と答えると、今度は先ほどのウエイトレスさんが、「じゃあ私も私も」と自分を指さします。

 若い子に、お金目当てとはいえキャーキャー言われるのは悪い気がしませんから、本来はウエイトレスさんには奢らないのですが、初日だし「バカラ」のウエイトレスさんが事務的で素っ気なかったこともあり、ここでは少し落ち着くかと思い、「いいよ」と答えると、実にうれしそうに「アリガトネ」と言います。

 ウエイトレスさんは飲み物を取りにいき、隣の女の子は私の手をとって、手のひらをマッサージのようにもみほぐしてくれます。これまでの3回のバンコク旅行の中で、ゴーゴーバーに行ったことはたぶん10回ぐらいあると思います。

 その中で、自分からそばに寄ってきた子は10人ぐらいでしょうか。しかし、いきなり手を取ってマッサージの真似事を始めたのはこの子が初めてで、ちょっと驚きました。(しかしその後の旅行でもこういったことをする子が増えているなと感じています)

 しかし「気持ちが良いです」。揉んでもらいながら、タイ語の中で知っている気持ちがよいを意味する、「サバ〜イ」と言うと、「サバ〜イ、サバ〜イ」と言いながらマッサージもどきを続けてくれます。

 これがこの子の客との親密性を高める戦略なんだなと心では思うものの、ともかく気持ちが良いのと、体の接触を伴うことで親密感が増します。

 そんなところへ先ほどのウエイトレスさんが戻ってきて、我々の様子を見て、また「サバ〜イ、サバ〜イ」と囃し立てます。たぶん私の顔はどうしようもなくデレデレしていたと思いますが、とりあえず飲み物が来たので、先ずは3人で乾杯。

 ウエイトレスさんは、一口飲んで、すぐに次々と入ってくるお客さんを案内しに行ってしまい、再び隣の女の子だけとなり、今度は適度にビールを飲みながら揉んでもらいます。

 しかし私の拙い経験で、隣の女の子が店の中で客の手のひらを揉んでいるのを見たことはありません。肩を組んだり抱きかかえたりしている客はいましたが、大半は横に座った女の子と話しをしているだけです。

 この子だけが特別なのかなあと思いつつ、まあ勝手にやってくれているんだから任せておこうと思い、そのまま続けてもらいます。

 ところが残念なことに、ダンサーの交代です。大音量の中で「change」と言ってステージと自分を指さしたので「OK go please」と言って送り出します。

 ステージ上でも、常にこちらを意識しているように視線を向けてくるので、なかなか他の子を鑑賞することが出来ません。嬉しいような、面倒なような複雑な気持ちです。

 それでもなんとなくほんわかした気分で、適当なところで切り上げ、そこそこのチップを渡し退店。第一日目が終了です。店を出て、歩いてホテルに戻りました。
  


トップページヘ 2011バンコク一人旅 第2日目