角を曲がると当然ながら通りは活況を呈しています。きらびやかなネオンが、昼間見た疲れ切った建物の汚れを隠しています。
さらに着飾った女の子たちがあちこちに群れているので、汚れた部分は隠蔽され、なんとなくお祭りのような雰囲気です。パッポンとはひと味違うなあと思いつつ、「さてどうしよう」と通りをゆっくり歩いていきます。
今日は昨日と違う店を覗いてみようと思っていました。といっても無闇やたらに入ってもお金の無駄遣いです。
一応事前にある程度評判の良い(ここで言う評判とは、ぼったくりの有無、勝手なドリンク攻撃、ダンサーの人数等を意味します)お店の名前を頭の中に入れてあります。
昨晩の「バカラ」や「シャーク」というのも、それら評判の良いお店の中の一つです。先ず通りの角を曲がると店内が暗くて怪しげな飲み屋さんがあります。
不思議なことに、こんな単なる飲み屋さんの前にも女の子がいて、通行人に「ちょっと飲んでいきませんか」(本当はタイ語なのでよく分からないのですが、そんな感じかなと)と声をかけてきます。
その先に「ロングガン」という、ショーで有名な店があるのですが、この店は呼び込みの子がいません。以前入ったこともありますが、女の子の雰囲気が私には合いませんでした。
そう思ってパス。さらにフラリフラリと歩いていくと、今度は「ティーラック」という、この界隈では一番店の面積が大きいらしい店が左手に見えてきます。
「よし、ここにしよう」と思って向かいかけたのですが、どうゆうわけかこの店の前にも呼び込みの子がおらず、ただ店の前のテーブルで欧米人が飲んで騒いでいるだけだったので、小心者の私はなんとなく気後れ。
結局そこもパス。残っているのは昨日行った2軒か、その前にある「リオ」というお店。小心者のくせに好奇心だけは旺盛なので始末が悪いのですが、新しい店に行きたいという気持ちを尊重して「リオ」の前まできました。
ところがこの店の店頭で待ちかまえていた女の子達の顔つきが気に入りません。ともかくド派手なメークで、2cmもあろうかと思えるようなつけまつげが気になりました。
自分でも下らないことを気にするなと思いつつ、あまりに派手な子は私の趣味ではないので、きっと店の中も似たようなもんだろうと勝手に判断し、店の前でユーターン。
「まあいいか。昨日の店で」と最初の気負いはすぐに消え、昨日と同じ「シャーク」へ。こちらは昨日入った店なので気楽にカーテンをくぐります。
昨日は愛嬌のある女の子にドリンクを奢っただけですから今日は寄ってこないだろうと思っていたのですが、入店した途端に先ず昨日ドリンクを奢ったウエイトレスの女の子に目ざとく見つけられ、「こっちだこっちだ」と席に案内されました。
「う〜ん、ちょっと1杯奢っただけだったのに金の力は恐ろしい。だけどこのウエイトレスさんの言いなりになっていたら、ドリンク代が馬鹿にならないぞ」と思いつつ着席。
例によって「ハイネケン」を注文し、「やれやれ、やっぱりここに来てしまったか」と寛いで1分もたたないうちに、連絡が伝わったのか、昨日のゴーゴーガールが奧から飛ぶように現れ、すぐに隣に座り込みます。もう「座っていいか」とも聞きません。なんだか押しかけ女房みたいな雰囲気です。
本当は他の女の子とも話しをしたかったのですが、折角寄ってきた子を邪険にするのは忍びない気持ちもあり、結局昨日と同じ雰囲気になりました。
ハイネケンを飲み、ドリンクを奢り、手と肩を揉んでもらうという情けないおじさんの姿です。