列車で「ワン・ポー」駅へ

 ホーム上で10分ほど列車を待っていると、遠くの方から列車が近づいてくる音が聞こえてきた。さてどんな列車だろうか。期待は出来ないなと思って待っていると、カーブから姿を表したのはまさしく想像通りのかなりくたびれた車両であった。

 しかし我々一行はこの列車の1等席に乗れるのだ。どんな席だろうか。ガイドさんに切符代わりのワッペンを胸に貼ってもらい、到着と同時に乗り込んだ。席はなんと指定席。胸のワッペンに座席番号が書いてある。

 一行はドヤドヤと乗り込み、若干のカルチャーショックと共に席を探す。座席は木で作られた4人がけのボックス席。クッションは無く、固い木のベンチだ。私の席は進行方向とは逆向きだったが、運良く川側の窓際の席だった。

 目の前には家族連れ。隣は一人旅と思われる青年。やがて列車は警笛を鳴らし、ゆっくりクウェー川鉄橋に向かう。

 鉄橋上にはまだ観光客が多数歩いているが、ちゃんと避難所が設けられている。もっともこの避難所かなり狭いので、列車が通過するときはすし詰め状態だ。

 鉄橋上をノタノタと通過した列車は徐々に速度を上げていく。バンコク市内に較べると空気の質が格段に良いが、窓が開けっ放しなので、進行方向に向かって座っている人にモロに風があたる。これは結構辛そうだった。

 また列車の振動、特に縦ゆれが激しく、下が木の椅子なので尻がかなり痛い。振動にあわせて上半身も縦に揺れる。結構重労働だ。

 周囲の景色はのどかな田園風景と書きたいところだが、むしろ手付かずの自然のままといった感じだ。時折農家の人を見かける。

 畑らしきものも結構見かける。サトウキビやトウモロコシ、アロエなんぞを見分けることが出来た。土壌は赤銅色で、見るからに痩せた土地だ。また昔地理で習った、いわゆる焼畑のようなことも行われているようだ。

 車内では頻繁に物売りが現われる。絵葉書、飲み物、Tシャツなんぞを5分おきに売りに来る。結構鬱陶しい。

 日本人はあまり買っていないようだったが、欧米人は買っていた。飲みものはたしかに必要だなと感じた。冬だから良いようなものの、車内は結構暑い。

 しかし続けざまに現われた物売りが途絶えた頃、なんと無料の飲料水が配られた。飲み物を先に売ってから来るなんて、「う〜ん、やるな!という感じだ。

 左手に水上レストランらしき建物が並んでいるのが見え、その先の右側が断崖絶壁となっている。

クウェー川の水上レストランらしき建物

 この絶壁を過ぎたところが「アルヒル桟道橋」。窓から下を見ると木造の橋となっていて、そこをゆっくりゆっくり通過。左側は川、右側は断崖絶壁という悪条件だ。ここは列車を通すために、日本軍がこの断崖を爆破したということで有名なようだ。

アルヒル桟道橋

 たしかに爆破でもしない限り、とても道を作るわけにはいかない絶壁だ。こんな山の中まで日本軍が来て、地元の住民や英国捕虜を使って鉄道を敷いていた、ということを聞いてなんとも複雑な思いだ。

 この桟道橋を過ぎてすぐの所に「ワン・ポー駅」があり、我々はここで下車。戦争の悲惨さに思いを馳せるのも大事だが、俗人は自分の腹具合の方が優先する。ちょうど昼食タイムだ。



川沿いレストランで昼食


オプショナルツアー


トップページヘ